吐き気・嘔吐

吐き気・嘔吐とは?

皆さん、今までに一度は吐き気や嘔吐をしたことがあると思います。

今回は、そんな吐き気と嘔吐について知っていきましょう。

吐き気とは「悪心(おしん)」とも表現され、嘔吐しそうだという差し迫った感覚がある状態を指します。

また、嘔吐とは、胃の内容物が食道,口腔へ逆流することで、不快感や苦痛を伴います。

ではなぜ吐き気や嘔吐が起こるのでしょうか?

吐き気・嘔吐の原因は?

吐き気や嘔吐は脳の延髄に「嘔吐中枢」と呼ばれる部位が刺激されることで症状として現れます。

嘔吐中枢は主に以下の4つの経路で刺激されると言われています。

①消化管や心臓から自律神経を通して刺激

②脳の神経からの刺激

③耳の三半規管からの刺激

④代謝の異常や血流からの化学物質による刺激

つまり、胃や腸の問題や脳の問題だけでなく、体のさまざまな部位に異常があったり、心理的影響によっても、吐き気や嘔吐が起こるということです!

なので、とても身近に起こる症状なのです。

吐き気・嘔吐を伴う病気は?

吐き気・嘔吐を起こす主な病気は以下のようにたくさんあります。

1)消化器系の病気

 腸閉塞、イレウス、便秘、逆流性食道炎、急性胃炎、急性胃腸炎、消化管穿孔、急性膵炎、急性胆嚢炎、胆石発作、急性肝炎、癌、胃の運動異常など

2)脳の病気

 脳卒中、頭蓋内圧亢進症、くも膜下出血、脳炎、片頭痛など

3)心臓や血管の病気

 心筋梗塞、狭心症、急性大動脈解離など

4)感染症

 敗血症、髄膜炎など

5)代謝の病気

 糖尿病性ケトアシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、尿毒症、高カルシウム血症など

6)眼の病気

 緑内障など

7)耳の病気

 メニエール病、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、前提神経炎など

8)泌尿器の病気

 尿路結石症、腎盂腎炎など

9)産科の病気

 悪阻(つわり)など

10)アレルギー

 アナフィラキシーショックなど

11)薬剤・内服薬

 NSAIDs(ロキソニンなど)、抗癌薬、ジゴキシン、テオフィリン、各種違法薬物など

12)精神的な影響

13) その他

  脱水、アルコール、放射線療法後、手術後など

吐き気・嘔吐の検査は?

必要に応じて以下の検査を行います。

・尿検査

・便検査:便潜血反応から消化管疾患などを疑います

・血液検査:体の中の炎症や臓器の異常の鑑別に使います。

・心電図検査:心疾患や電解質異常を疑う場合に行います。

・腹部レントゲン検査:消化管穿孔や腸閉塞を疑う場合などに行います。

・腹部超音波検査(エコー検査):お腹の臓器に異常がないか確認します。

・CT検査:各臓器の異常がないか画像から詳しく調べます。

・頭部MRI検査:頭部外傷、脳内出血、くも膜下出血など脳の異常を疑う場合に行います。

・妊娠反応検査:妊娠の可能性がある場合行います。

吐き気・嘔吐の治療は?

プリンぺランやドンペリドンといった、吐き気止めの薬剤はあります。

しかし、これらの薬剤は原因を治療しているわけではないので、一時凌ぎになってしまいます。

そのため、重要なのは吐き気や嘔吐が出ている原因をしっかり調べることになります。

重大な病気が隠れている吐き気や嘔吐を放置しないようにしましょう。

危険な吐き気・嘔吐

・激しい頭痛がある

・意識が朦朧とする

・お腹が張っている

・排便が最近ない

・強い腹痛が続く

これらの症状は重大な病気のサインかもしれません。

このような症状がある場合はすぐに病院へいきましょう。

まとめ

吐き気や嘔吐は、胃腸の不調だけでなく、脳・心臓・代謝異常など体のさまざまな要因で起こってくる症状です。

一時的なものも多くありますが、原因によっては命に関わる病気が隠れている場合もあります。

「食べすぎかな」「疲れのせいかな」と自己判断せずに、症状が続く・繰り返す・他の症状もあるといった場合には、早めに医療機関で検査を受けましょう。

参考文献

American Family Physician. 2024;109(5):417-425.

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内科診断学 第4版