過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群(IBS)は、19世紀半ばにイギリスの医師William Cummingが1849年に「同じ患者で便秘と下痢が交互に現れる」と記載したことが、医学文献上最初期の明確な記述とされています。その後、20世紀にかけて「mucous colitis」「spastic colitis」「nervous colon」など様々な名称で呼ばれてきました。現在、過敏性腸症候群は、大腸や小腸にがんや潰瘍、炎症など明らかな異常がないにもかかわらず、下痢あるいは便秘などの便通異常と腹痛・腹部膨満感などのおなかの症状がある病気として知られています。

過敏性腸症候群になりやすい人は?
なりやすい人には以下の特徴があります。
・年齢が若い
・女性の方がなりやすい
・心理的なストレス
・腸炎後
・家族に過敏性腸症候群の人がいる
・アレルギーを持っている人
・痩せ型の人(低BMI)
・幼少期の逆境体験(トラウマなど)
過敏性腸症候群の症状は?
主に以下のような症状があります。
・腹痛・お腹の不快感
・排便により痛みや不快感が軽くなる
・排便回数の変化(便が多く出る・出にくくなる)
・便の形状の変化(硬い・やわらかい・水っぽいなど)
・お腹の張り(膨満感)
・ガスがたまりやすい、ガスが出にくい
・排便後の残便感(出しきれない感じ)
・急な便意(我慢できない強い便意)
・症状がストレスや緊張で悪化する

過敏性腸症候群の診断基準は?
現在、Roma IVという国際的に使用されている基準に則って診断基準が定められています。

過敏性腸症候群の検査は?
最も大事なことは、大腸や小腸にがんや潰瘍・炎症など明らかな異常がないか検査でチェックすることです。明らかな異常がないか確認するために以下の検査が必要になる場合があります。
・血液検査
・便検査
・大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)
・腹部レントゲン
・CT検査
・腹部超音波検査
診断後の食事療法を行う場合、IgG抗体検査が有用になる可能性があると言われています。(保険適応外)

過敏性腸症候群の薬物治療は?
症状により、使用する薬剤は変わってきます。
便秘症状がメインの方:
・リンゼス
・アミティーザ
・酸化マグネシウム
・モビコール
・グーフィス
・ポリフル
・モサプリド など
下痢症状がメインの方:
・イリボー
・ロペラミド
・ポリフル
・コレスチラミン
・半夏瀉心湯(漢方) など
効果が乏しい場合には、抗不安薬や抗うつ薬の使用も行います。
患者さんによって状態が多種多様なので、医師と相談の上、処方をしてもらいましょう。
過敏性腸症候群の日常でできる治療は?
* 食事療法
・低FODMAP食
ガスが発生しやすい食事を避けることで症状が改善する。
・乳糖食の回避
乳糖不耐症がある方は乳糖を含む食品は避けましょう。
・グルテンの回避
グルテン(小麦などに含まれている)を含まない食事をすると、症状が改善したという報告があります。しかし、グルテンが問題ではなくその中に含まれるフルクタンが原因の可能性があるとの研究結果もあります。
・水溶性食物繊維の摂取
* 運動
週に3~5日、20~60分の汗をかく程度の運動
* 睡眠
7〜8時間程度の十分な睡眠

まとめ
「お腹が弱い」「緊張するとトイレに行きたくなる」
そう感じている方の中には、過敏性腸症候群が隠れている場合があります。
IBSは、ストレスや腸の過敏性が関係しており、体の異常が見つからないために我慢してしまう人が多い病気です。
しかし、適切な検査と治療で改善することが分かっています。
不安やつらい症状を抱えたまま過ごさず、早めに消化器内科で相談・検査を受けることが大切です。
参考文献
一般社団法人 日本大腸肛門病学会
機能性消化管疾患診療ガイドライン2020 過敏性腸症候群
N Engl J Med. 2001 Jun 14;344(24):1846-50.
N Engl J Med. 2017 Jun 29;376(26):2566-2578.
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