「受けたほうがいいのはわかっているけれど、今は本当に忙しくて動けません」
「検診の案内は届いたままです。やる気がないわけではないのに、毎年そのままになってしまいます」
こうした声は、とても多いです。
大腸がん検診を受けない理由は、検診が嫌いだからとは限りません。多くの場合は、仕事、家事、子育て、親のことなどで毎日が埋まっていて、自分のことを考える優先順位がどうしても後ろに下がってしまう からです。
でも、消化器内科の医師としてお伝えしたいのは、忙しい方ほど「まとまった時間ができてから受ける」と考えないほうがよい、ということです。
今回は、忙しい方が大腸がん検診を受けやすくする考え方を、整理していきます。
1. 忙しい人ほど、検診を「大きな予定」にしすぎています
大腸がん検診と聞くと、「病院に行って、長い時間かかる大変な検査」というイメージを持つ方が少なくありません。
そうなると、
- 半日空けないと無理そう
- 落ち着いた月でないとできない
- 仕事が一段落してから考えよう
という発想になりやすくなります。
でも、一宮市の大腸がん検診の入口は、40歳以上の方が年1回500円で受けられる便潜血検査 です。最初から大腸カメラを受けるわけではありません。
便潜血検査は、自宅で便を採って提出する検査です。つまり、最初の一歩は「丸一日空けること」ではなく、「検診を生活の中に入れ込むこと」です。
ここを取り違えると、忙しい人ほどずっと始められません。

2. 「検診」と「精密検査」を頭の中で分けると動きやすくなります
忙しい方が止まりやすい理由のひとつは、先のことまで一気に考えすぎることです。
「もし陽性だったら?」
「そのあと大腸カメラになったら大変そう」
「そこまで考えると、今は手をつけたくない」
この流れで止まってしまうことがあります。
でも、実際には段階を分けて考えるほうが現実的です。
まずは便潜血検査で確認する。
その結果に応じて、必要なら次を考える。
この順番です。
検診の入口は、あくまで入口です。最初から全部を背負って考えなくて大丈夫です。忙しい方ほど、「今やることは何か」を小さく分けたほうが動けます。
3. 忙しい人に必要なのは、気合いではなく段取りです
大腸がん検診を毎年受けそびれてしまう方に必要なのは、「今年こそ頑張る」という気持ちより、むしろ段取りです。
たとえば、
- 案内が届いたら、その日のうちに開封する
- 「余裕ができたら」ではなく、今月のどこで進めるかを先に決める
- 週末や比較的落ち着く日に便を採る前提で考える
- 提出日を自分の予定表に入れてしまう
こうした工夫は、とても地味です。
でも、忙しい方ほど、こうした小さな設計の差が大きく効きます。時間が自然に空くのを待っていると、たいてい空きません。だからこそ、空いた時間でやるのではなく、先に枠を作る という発想が大切です。
4. それでも「もし陽性だったら」と不安な方へ
忙しい方ほど、検診を受けない理由の裏に「結果が出たあとの対応まで考える余裕がない」という不安があります。
ここで知っておいていただきたいのは、便潜血陽性が出たからといって、すぐに大腸がんと決まるわけではない、ということです。陽性の方のうち、実際にがんが見つかるのは 約3〜6% とされています。
一方で、陽性をそのままにしてしまうと、せっかく拾えたサインを活かせません。
必要になった場合の大腸カメラは、鎮静剤を使って眠っているような状態で受けられることがあり、検査時間の目安は 15〜30分ほど です。検査中にポリープが見つかった場合、その場で日帰り切除できることもあります。
つまり、忙しい方にとって大切なのは、「陽性が出たら怖いから受けない」ではなく、「陽性が出たら、そのときに次を整理する」と考えることです。
5. 忙しい人ほど、症状が出る前の確認に向いています
大腸がん検診は、症状がない方のための検診です。
忙しい方は、体調に大きな問題がなければ、自分のことをどんどん後ろに回しがちです。だからこそ、「困っていない今のうちに確認しておく」ことに意味があります。
逆に、血便、黒っぽい便、長引く便秘や下痢、急な体重減少などがある場合は、検診を待つより受診して相談したほうが安心です。
ここで大切なのは、
- 症状がないなら検診を予定に入れる
- 症状があるなら受診を優先する
という使い分けです。
忙しい方ほど、この線引きを知っておくと迷いが減ります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 忙しくて本当に時間が取れません。それでも受けたほうがいいですか?
A. はい。むしろ忙しくて自分のことを後回しにしやすい方ほど、年1回の検診を先に予定へ入れておく意味があります。最初の入口は便潜血検査なので、いきなり大きな時間を空ける前提で考えなくて大丈夫です。
Q. 今は症状がないので、落ち着いてからでもいいですか?
A. 症状がない今だからこそ、検診の意味があります。時間ができてからではなく、「年1回の確認」として先に枠を取ってしまうほうが受けそびれにくくなります。
Q. もし陽性だったら、そのあと忙しくなりませんか?
A. 陽性だった場合は、その時点で次の検査を考えることになります。ただし、陽性=がん確定ではありません。必要な確認を順番に進めることで、将来の不安を小さくしやすくなります。
メッセージ
忙しい方ほど、大腸がん検診は「余裕がある人のもの」に見えてしまうかもしれません。
でも実際には、年1回の確認を後回しにしやすい方こそ、検診の恩恵を受けやすいと私は思っています。
怖がってほしいのではありません。
忙しいから無理、と決めつけてしまう前に、「入口だけでも進められないか」を考えてほしいです。
検診を受けるべきか迷っている方、受けたい気持ちはあるのに毎年止まってしまう方は、ご都合のよいタイミングでご相談ください。検診から始めればよいのか、受診を優先したほうがよいのか、一緒に整理していきましょう。
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<監修>

イチ*ビル消化器内科クリニック 院長
消化器病・消化器内視鏡専門医
三浦 昂

