「9月にインフルエンザワクチンを打ったけれど、受験がある2月まで効果は続くの?」
「絶対にインフルエンザにかかりたくないので、1月にもう一度ワクチンを打った方がいい?」
こうした質問をいただくことがあります。
特に最近は、従来の「冬になってからインフルエンザが流行する」というイメージとは異なり、9月頃から感染者が増えることもあります。
早く流行するのであれば早くワクチンを打ちたい。
しかし、早く打った分だけ冬の後半には効果が弱くなってしまうのではないか。
それなら、途中でもう一度ワクチンを打てばよいのではないか。
非常にもっともな疑問です。
今回は、
「成人が同じインフルエンザシーズンに2回ワクチンを接種すると、1回だけよりインフルエンザを予防できるのか?」
について、現在分かっている研究をもとに解説します。
先に結論!!
「2回目の接種で効果が上乗せされる可能性はありますが、健康な成人で実際にインフルエンザの発症をさらに減らせるという確かなエビデンスはありません」
そのため、健康な成人に対しては現在も1シーズン1回接種が原則です。
一方で、「2回目は全く意味がない」と証明されているわけでもありません。
ここが今回のポイントです。
なお、ここでいう「効果」は、厳密にはウイルスが体内に入ること自体を完全に防ぐ「感染阻止」ではなく、主にインフルエンザを発症することを防ぐ効果(発症予防効果)として考えます。

なぜ2回目を打ちたくなるのか?
インフルエンザワクチンは、接種した翌日からすぐ効くわけではありません。
接種後、免疫ができるまでおよそ2週間程度かかり、その後の1〜3か月程度は比較的高い予防効果が期待されます。
しかし、その効果はずっと同じ強さで続くわけではありません。
時間が経過すると少しずつ低下していきます。
この現象をwaning(免疫効果の減弱)と呼びます。
では、具体的にどの程度弱くなるのでしょうか。
① ワクチンの効果は時間とともに弱くなる
2025年に発表された18〜65歳の健康成人を対象としたsystematic review・meta-analysisでは、35研究が解析されました。
その結果、ワクチン接種によって上昇した抗体価そのものは5〜7か月後でも接種前より高い状態が維持されていました。
つまり、
「5か月経ったらワクチンが突然効かなくなる」
というわけではありません。
一方、実際のインフルエンザ発症を防ぐワクチン効果を見ると、A/H3N2とB型では接種から5か月を超えると予防効果が明らかに低下する傾向、A/H1N1については5か月以降にも有意な予防効果が残っていました。
さらに2026年に発表された49研究をまとめたreviewでも、ワクチン効果は一般的に接種後1〜3か月が高く、その後3〜6か月にかけて徐々に低下する傾向が確認されています。特にA/H3N2や高齢者ではwaningが比較的一貫して認められています。
したがって、
9月に接種した場合、1月には約4か月、2月には約5か月が経過しています。
ワクチンの効果は残っているものの、10〜11月頃と比べれば低下している可能性があります。
そこで、
「1月頃にもう一度ワクチンを打てば、免疫をもう一度高められるのでは?」
という疑問が出てきます。
実際、この考え方を検討した研究があります。
② 3か月後に2回目を接種すると抗体価は約14%高くなった
オランダの高齢者施設で生活する815人を対象としたrandomized controlled trialがあります。
最初のインフルエンザワクチン接種から84日後、つまり約3か月後に、もう一度インフルエンザワクチンを接種する群とプラセボを接種する群に分けました。
その結果、2回目を接種した群では、接種しなかった群と比較してインフルエンザに対する抗体価が平均14%高くなりました。
つまり、
数か月後にもう一度ワクチンを打つことで、抗体をもう一度刺激できる可能性
は実際に示されています。
ただし、この研究には非常に重要な注意点があります。
対象者の中央値年齢は83歳で、健康な若年成人を対象とした研究ではありません。
さらに、この研究で調べた中心的な指標は抗体価です。
「実際にインフルエンザにかかった人数が減ったか」
「入院が減ったか」
「重症化が減ったか」
を証明した研究ではありません。
したがって、
抗体価が14%高くなった
= インフルエンザ発症が14%減る
という意味ではありません。
さらに、他の研究では追加接種によって明確な抗体価の上乗せが確認できなかったものもあり、boosterによる免疫反応がどの程度得られるのかについても、完全に一致した結果にはなっていません。
③ 6か月後に2回目を接種すると「インフルエンザ様症状」が減った研究もある
さらに興味深い研究があります。
シンガポールで行われたTROPICS1というRCTです。
65歳以上の成人200人を対象として、全員に最初のインフルエンザワクチンを接種した後、6か月後にもう一度インフルエンザワクチンを接種する群と、別のワクチンを接種する対照群に分けました。
その結果、2回目のインフルエンザワクチンを接種した群では、その後6か月間のinfluenza-like illness(ILI:インフルエンザ様疾患)が少なくなりました。
ILIは、
「発熱や咳など、インフルエンザらしい症状が出た状態」
のことで、必ずしも本当にインフルエンザウイルス感染だったという意味ではありません。
この研究では追加接種群のILIが57.1%少ないという結果でしたが、95%信頼区間は0.6〜81.5%と非常に幅があるので、信頼に足るかは疑問が残ります。
さらにここで最大の問題があります。
この研究では、症状が出た人全員についてPCRなどでインフルエンザを確定診断しているわけではありません。
したがって、
「2回接種するとインフルエンザそのものが約半分になった」
とは言えません。
ただ、
「同一シーズンに追加接種しても全く意味がない」ことを示す研究でもありません。
追加接種に何らかの臨床的利益が存在する可能性を示した興味深い研究だと思います。
ただし、こちらも対象は65歳以上であり、シンガポールという年間を通してインフルエンザが流行する地域で行われています。
日本の健康な成人や受験生に、そのまま当てはめることはできません。
実は一番知りたい研究がない
私たちが本当に知りたいのは、
「9月にワクチンを接種した健康な成人が、1月頃にもう一度接種すると、2〜3月のインフルエンザ発症が減るのか?」
ではないでしょうか。
例えば、
「受験生なので絶対に2月にインフルエンザにかかりたくない」
「大切な仕事やイベントがある」
「医療従事者なので感染リスクをできる限り下げたい」
という健康な成人です。
ところが、この条件で、
1回接種群 vs 数か月後に再接種を行う2回接種群
を比較し、PCRなどで確認されたインフルエンザ発症を主要評価項目として調べた質の高い研究は、現在ほとんどありません。
つまり、私たちが一番知りたいところが、まだ研究されていないのです。
では厚生労働省はどう考えている?
現在、厚生労働省は健康成人について、インフルエンザHAワクチン0.5mLを1回接種することで、2回接種と同程度の抗体価上昇が得られるという研究を紹介しています。
そのため、日本の定期接種も1回接種となっています。
WHOも、9歳以上の小児および健康成人については1回接種を基本としています。
米国CDCも2026–27シーズンについて、9歳以上は1シーズン1回接種とし、すでにそのシーズンの接種を完了した人については、最初にいつ接種したかにかかわらず2回目のbooster目的の再接種を推奨していません。
したがって、現在の標準的な考え方は、
成人は原則1シーズン1回
です。
日本では「2回接種」と「数か月後のbooster接種」は少し意味が違う
もう一点知っておいていただきたいことがあります。
日本のインフルエンザHAワクチンの添付文書では、13歳以上について、
0.5mLを1回、またはおよそ1〜4週間の間隔をあけて2回
という用法になっています。
つまり、
9月に1回目
→ 10月に2回目
という接種方法と、
9月に1回目
→ 1月に2回目のbooster接種
という接種方法は、同じ「年2回接種」でも医学的には別の話です。
数か月後のboosterは、現在国内で一般的に想定されている2回接種スケジュールとは異なります。
結局、成人は2回打った方がいいの?
現在分かっていることをまとめると、
・インフルエンザワクチンの効果は時間とともに徐々に低下する
・数か月後の追加接種で抗体価が上昇する可能性はある
・6か月後の追加接種でILIが減った高齢者のRCTもある
・しかし、健康な成人で2回目によって「検査で確認されたインフルエンザ発症」がさらに減ることを証明した研究はない
・そのため、現在の日本・WHO・CDCの基本方針は成人1シーズン1回
となります。
したがって、現時点で最も正確な表現は、
「成人は原則1回。2回目によって抗体価が上昇したり、予防効果が上乗せされたりする可能性は否定できない。しかし、健康な成人で発症予防効果がさらに高くなるという確かなエビデンスはまだない」
だと思います。
「絶対に今年はインフルエンザにかかりたくない」という人は?
受験、結婚式、大切な仕事など、
「今年だけは絶対にインフルエンザにかかりたくない」
という方もいると思います。
特に9月など早い時期にワクチンを接種した方では、1〜2月には接種から4〜5か月経過しているため、
「もう一度打ったら予防効果を高められるのでは?」
と考えるのは自然です。
そして、これまでの研究から考えると、追加接種によって免疫反応が再び高まる可能性そのものはあります。
しかし現時点では、
「2回目を打てば、1回接種より確実にインフルエンザにかかりにくくなります」
とは言えません。
そのため、健康成人全員に2回目のbooster接種を勧める段階ではありません。
もし数か月後の追加接種を希望される場合には、期待される上乗せ効果がまだ確立されていないことや、通常の国内接種スケジュールとは異なることを理解したうえで、医師と個別に相談することをお勧めします。
一方で、すでにインフルエンザが流行しているのであれば、
「冬の後半に効果が弱くなるかもしれないから」という理由だけで、今必要なワクチンを何か月も先延ばしにする必要はありません。
流行している時期に感染してしまえば意味がないからです。
まず適切な時期に1回目を接種する。
そして今後、「9月に接種した健康成人に1月に2回目のbooster接種を行うと、2〜3月の検査確定インフルエンザが本当に減るのか」という研究が行われれば、この疑問にもっと明確な答えが出てくると思います。
まとめ
現時点では、
「2回目は絶対に意味がない」でもなければ、
「2回打った方が確実に予防効果が高い」でもありません。
正確には、
「効果が上乗せされる可能性を示唆するデータはある。しかし、健康成人における発症予防効果はまだ証明されていないため、成人は原則1シーズン1回」
です。
医学は「まだ分かっていない」こともたくさんあります。2回目接種を考えている方はかかりつけの先生と相談してみてくださいね!
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<監修>

イチ*ビル消化器内科クリニック 院長
消化器病・消化器内視鏡専門医
三浦 昂
参考文献
- Nazareth J, Veli N, Pan D, et al. Duration of the serological response and effectiveness of the inactivated influenza vaccine in healthy adults aged 18–65 years: a systematic review and meta-analysis. Lancet Microbe. 2025;6(11):101136. doi:10.1016/j.lanmic.2025.101136. PMID: 41067240.
- Doyon-Plourde P, Tadount F, Gil A, et al. Intraseasonal waning of influenza vaccine effectiveness and implications for the optimal timing of seasonal vaccination programs: A scoping review. Can Commun Dis Rep. 2026;52(6):231-245. doi:10.14745/ccdr.v52i06a03. PMID: 42592326.
- Roos-Van Eijndhoven DG, Cools HJ, Westendorp RG, Ten Cate-Hoek AJ, Knook DL, Remarque EJ. Randomized controlled trial of seroresponses to double dose and booster influenza vaccination in frail elderly subjects. J Med Virol. 2001;63(4):293-298. doi:10.1002/1096-9071(200104)63:4<293::AID-JMV1004>3.0.CO;2-C. PMID: 11241460.
- Young B, Sadarangani S, Haur SY, et al. Semiannual Versus Annual Influenza Vaccination in Older Adults in the Tropics: An Observer-blind, Active-comparator-controlled, Randomized Superiority Trial. Clin Infect Dis. 2019;69(1):121-129. doi:10.1093/cid/ciy836. PMID: 30277500.
- 厚生労働省. 「インフルエンザワクチン(季節性)」接種スケジュールや接種方法 Q9「ワクチンは1回接種でよいでしょうか?」
- World Health Organization. Vaccines against influenza: WHO position paper – May 2022. Weekly Epidemiological Record. 2022;97(19):185-208.
- Centers for Disease Control and Prevention. Interim Clinical Considerations for the Use of Seasonal Influenza Vaccines in the United States, 2026–2027 Influenza Season.
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). インフルエンザHAワクチン「生研」添付文書. 2026年7月改訂(第10版).

