カレーの成分クルクミンが大腸ポリープの再発予防に?日本の臨床試験と、ほかに期待される効果

「カレーの成分が、大腸ポリープの再発を防ぐかもしれない」

2026年9月、徳島大学などの研究グループから、ウコンの黄色い成分「クルクミン」に関する研究成果が発表されました。大腸の腺腫を切除した方に高吸収型クルクミンを使い、2年後の大腸を調べた臨床試験です。

結果は、腺腫全体の再発率には明確な差がなかった一方、6mm以上の腺腫が見つかる割合は低かったというものでした。将来の予防法につながる、興味深い結果です。

今回は、この研究で分かったことと、クルクミンについて人で効果が報告されているほかの分野を、消化器内科医の視点でお話しします。

1. クルクミンは、ウコンの黄色い色素成分

ウコンはターメリックとも呼ばれる植物で、カレー粉にも使われています。その黄色をつくる成分の一つが、ポリフェノールの仲間であるクルクミンです。

炎症や酸化ストレス、細胞の増殖に関わる仕組みへの作用が基礎研究で調べられ、健康への効果が注目されてきました。ただし、細胞や動物で作用が確認されることと、人が飲んで病気を予防できることの間には、いくつもの確認が必要です。

通常のクルクミンは体内に吸収されにくいこともあり、研究では吸収を高めた製剤が使われる場合があります。同じ「クルクミン」でも、製剤や量が違えば、効果や安全性をそのまま置き換えることはできません。

2. 日本の26施設で、ポリープ切除後の577人を追跡

今回の試験では、過去に大腸の腫瘍性病変を内視鏡で切除した577人を、高吸収型クルクミンを飲む群と、見た目が同じプラセボを飲む群に無作為に分けました。患者さんも医療者も、どちらが入っているか分からない「二重盲検」の試験です。

使われたのは、セラクルミンという高吸収型製剤で、クルクミンとして1回180mgを1日2回、2年間服用しました。これは研究条件の説明であり、一般の方への推奨量ではありません。

試験開始時に確認された腺腫を切除したうえで、2年後に大腸カメラを行い、新たに見つかる腺腫の有無、数、大きさを比較しています。結果の解析対象は、2年後の大腸カメラを受けた方でした。

大腸腺腫は、ポリープの中でも一部が将来がんになる可能性を持つ病変です。ただし、すべてのポリープが腺腫というわけでも、すべての腺腫ががんになるわけでもありません。

3. 「全体の再発」と「6mm以上の腺腫」で、結果が分かれた

最初に押さえたいのは、研究の中心となる「主要評価項目」の結果です。

2年後に腺腫が一つでも見つかった割合は、両群で統計学的に明確な差がありませんでした。相対リスクは0.98で、腺腫全体の再発を減らす効果は確認されませんでした。

一方、あらかじめ注目していた6mm以上の腺腫では、次の違いがありました。

2年後に6mm以上の腺腫が見つかった割合結果
プラセボ群13.3%(35人/263人)
クルクミン群7.5%(19人/253人)

相対的には約44%低く、割合の差は約5.8ポイントでした。「100人中44人を防いだ」という意味ではなく、おおよそ100人中13人と8人の違いです。6mm以上の腺腫の個数や、見つかった腺腫全体の大きさにも差がありました。

この結果は、腺腫ができること自体より、大きくなる過程を抑える可能性を示しています。ただし、これは2年後の発見状況から考えられる解釈で、体内でどのような仕組みが働いたのかまで確定したわけではありません。

今回調べたのは腺腫であり、大腸がんの発症や死亡が減ることまでは証明されていません。主要評価項目では差がなかった点も踏まえ、追加の研究が必要です。

4. クルクミンには、ほかにどんな効果がある?

人を対象にした比較試験でも、いくつかの分野で改善が報告されています。ここでは、具体的な臨床試験がある3つを紹介します。

潰瘍性大腸炎:通常治療への上乗せで、症状が落ち着く可能性

メサラジン治療で十分に改善しない軽症〜中等症の潰瘍性大腸炎患者50人を対象に、クルクミンを追加する試験が行われました。

4週間後、症状が落ち着いた「臨床的寛解」の割合は、クルクミン群で53.8%、プラセボ群で0%でした。内視鏡所見の改善も報告されています。

一方、別の少量投与の試験では、明確な効果が確認されませんでした。少人数・短期間の研究が多く、製剤や用量も異なるため、誰にどの方法が適するかは十分に定まっていません。

あくまで通常治療に追加した研究です。メサラジンなどの薬をやめて、サプリに置き換える根拠にはなりません。

変形性膝関節症:膝の痛みが軽くなる可能性

膝の変形性関節症がある70人の試験では、ウコン由来の抽出物を12週間使った群で、プラセボ群より痛みが改善しました。

ただし、MRIで見た関節内の液体貯留や滑膜炎の程度、軟骨の指標には改善が確認されませんでした。痛みが軽くなる可能性と、傷んだ軟骨が修復されることは分けて考えます。

この研究はクルクミン単独ではなく特定のウコン抽出物を使っており、市販品すべてに同じ効果があるとは言えません。長期的な効果も、さらに確認が必要です。

機能性ディスペプシア:胃もたれなどが改善する可能性

機能性ディスペプシアは、症状を説明する明らかな病変がないのに、胃もたれ、みぞおちの痛み、少量で満腹になる感じなどが続く病気です。

132人をクルクミン、胃酸を抑える薬のオメプラゾール、プラセボに分けた試験では、4週間後の症状スコアがクルクミン群でプラセボ群より改善しました。

オメプラゾール群との明確な差はありませんでしたが、それだけで薬と同じ効果が確立したとは言えません。短期間の試験であり、潰瘍やがんなどによる胃の症状を治せるという結果でもありません。続く胃もたれを、サプリだけで様子見することは避けましょう。

5. じゃあ、カレーをたくさん食べればいい?

今回の大腸腺腫の試験は、通常のカレーを食べてもらった研究ではありません。食品中の含有量や吸収率は試験製剤と異なるため、「毎日カレーを食べれば同じ予防効果が得られる」「何杯食べればよい」とは換算できません。

カレーを食事として楽しむのはよいことですが、クルクミンだけを目的に量を増やす必要はありません。食事全体のバランスや、無理なく続けられる生活習慣も大切にしましょう。

サプリメントについては、今回の試験で治療に関連した有害事象は少なく軽度でした。ただし、それでまれな副作用まで否定できるわけではありません。

ウコン・クルクミン製品では、胃の不快感、下痢などのほか、まれに肝障害が報告されています。高吸収型製剤や高用量で注意が必要とされており、「食品由来だから多いほどよい」とは考えないでください。

メッセージ

身近な食品の成分が、人の臨床試験で将来の予防法につながる可能性を示したことは、楽しみな進歩です。

その期待を診療に役立てるには、良かった結果と、まだ確認できていないことを一緒に受け止めることが大切だと思っています。今回なら「比較的大きな腺腫が少なかった」という期待と、「腺腫全体の再発や大腸がんの予防は確認されていない」という限界です。

ただ、良いものが入っていると思って食事をすると、何だかさらに美味しくカレーが食べられそうですね。

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<監修>

イチ*ビル消化器内科クリニック 院長

消化器病・消化器内視鏡専門医

三浦 昂

参考文献・参考情報

  1. 徳島大学.カレー粉成分クルクミンが大腸前がん病変の再発を抑制.2026年9月25日.発表資料
  2. Takayama T, et al. Curcumin Suppresses Growth of Recurrent Colorectal Adenoma After Endoscopic Resection: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicenter Trial. Am J Gastroenterol. 2026 Aug 28. doi:10.14309/ajg.0000000000004193. PMID: 42669465
  3. Lang A, et al. Curcumin in Combination With Mesalamine Induces Remission in Patients With Mild-to-Moderate Ulcerative Colitis in a Randomized Controlled Trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2015;13:1444-1449.e1. PMID: 25724700
  4. Kedia S, et al. Low dose oral curcumin is not effective in induction of remission in mild to moderate ulcerative colitis: Results from a randomized double blind placebo controlled trial. World J Gastrointest Pharmacol Ther. 2017;8:147-154. PMID: 28533925
  5. Wang Z, et al. Effectiveness of Curcuma longa Extract for the Treatment of Symptoms and Effusion-Synovitis of Knee Osteoarthritis: A Randomized Trial. Ann Intern Med. 2020;173:861-869. PMID: 32926799
  6. Yongwatana K, et al. Curcuma longa Linn versus omeprazole in treatment of functional dyspepsia: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Gastroenterol Hepatol. 2022;37:335-341. PMID: 34652861
  7. NCCIH. Turmeric.
  8. Therapeutic Goods Administration. Medicines containing turmeric or curcumin: risk of liver injury.