お腹の張りとは?
お腹の中にガスが溜まったり、腸の動きが乱れたりすることで、お腹が膨らんだような圧迫感・パンパンになった感覚がある状態です。
実際にお腹がふくらむ場合もあれば、外から見た形は変わらなくても「張って苦しい」と感じる場合もあります。

お腹の張りの種類
大きく分けると2つの種類があります。外から見てお腹が膨れている「腹部膨隆」と、外から見てもお腹が膨れていないのにお腹が張っている感覚がある「機能性腹部膨満」の2種類があります。
お腹の張りの原因は?
「腹部膨隆」の原因は以下の6つが主な原因と言われています。
・腸にガスが溜まる:便やガスの通過障害がある場合、腸閉塞や重度の便秘などが考えられます。ゲップやガスが増える場合は、空気嚥下症や腸管ガスの過剰な産生〔小腸内細菌異常増殖症(SIBO:small intestinal bacteria overgrowth)〕が考えられます。
・便が溜まる:便が硬かったり、腸の運動が乏しい場合に起こる可能性があります。
・肥満:急激な体重増加などでお腹が張ってきます。
・妊娠:胎児がお腹の中にいるとお腹が張ります。
・腹水:大量の飲酒やウイルス性肝炎などによって肝硬変になると腹水が出てきてしまう方がいます。
・腫瘍:お腹に大きな腫瘍ができるとお腹が張ります。体重減少や食欲不振がないかチェックしておきましょう。
「機能性腹部膨満」の原因として代表的な疾患として過敏性腸症候群があります。この場合、腸の運動異常や自律神経の機能異常、ストレスなどが原因として考えられます。
お腹の張りを伴う病気は?
「腹部膨隆」を引き起こす病気は以下のような病気があります。
・偽性腸閉塞症
・巨大結腸症
・SIBO
・腸閉塞・イレウス
・消化管運動障害(好酸球性胃腸炎など)
・肝硬変、ネフローゼ症候群、心不全、癌性腹水
・腹腔内出血
・腹膜偽粘液腫
・肝臓、脾臓の腫大
・巨大肝嚢胞・腎嚢胞
・水腎症など
「機能性腹部膨満」を引き起こす病気は以下のような病気があります。
・機能性ディスペプシア(食後愁訴症候群)
・過敏性腸症候群(便秘型)
・慢性便秘
・食物アレルギー
・月経前症候群
お腹の張りの検査は?
以下の検査で原因を精査していきます。
・腹部X線検査:腸管が拡張しているかどうかをみます。
・腹部超音波検査
・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
・下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
・腹部CT検査
・血液検査
・尿検査
・腹水穿刺:腹水貯留がある場合
など

お腹の張りの治療は?
お腹の張りへの治療は、
①まず原因となる病気がないか検査をする。原因が見つかれば病気の治療を行う。
②検査をしても原因が見つからない場合、「機能性腹部膨満」として治療する
という順序で進めます。
⚫️「機能性腹部膨満」の治療法
・食事療法
欧州消化管運動学会(ESNM)、欧州消化器学会(UEG)、米国消化器病学会(AGA)などの専門学会は、以下の食事療法を推奨しています。
#乳糖制限
乳糖不耐症がある場合は、腹部膨満の改善が期待できます。
#低FODMAP食(発酵性糖質制限食)
発酵しやすい糖質を減らすことで、腸内発酵の抑制とガス産生の減少により膨満感の改善が報告されています。
・薬物療法
以下の治療薬は医師が状態を把握した上で処方・提案します。
#便秘を伴う場合:
リナクロチド ルビプロストンなど
#腸の過敏性・けいれんが原因の場合:
ペパーミントオイル
#腸内細菌バランスの乱れが関与する場合:
リファキシミン 整腸薬(ミヤBMやビオフェルミンなど)
#内臓過敏性や心理的要因が関与する場合:
三環系抗うつ薬 SNRIなど
・バイオフィードバック療法
排便障害(骨盤底筋の協調不全)や、腹壁・横隔膜の使い方の問題が膨満感に関与している場合に有効です。特に、便秘や排便困難を伴う症例で改善が期待できます。専門医療機関で行うことが可能です。
自律神経が関わることもあるため、ストレス管理や睡眠といった生活習慣の改善を行うことはとても重要です。
まとめ
お腹の張りは、ガスが溜まっただけのときもあれば、腸の動きが乱れているとき、ストレスが溜まっているときにも起こります。
「たいしたことないかな」と思いやすい症状ですが、思わぬ病気が隠れていることもあります。
張りが続く、食後に苦しくなる、ガスが抜けづらいなど、気になることがあれば、早めにお近くの消化器内科に相談しましょう。

参考文献
United European Gastroenterology Journal. 2025;. doi:10.1002/ueg2.70098.
Gastroenterology. 2023;165(3):791-800.e3. doi:10.1053/j.gastro.2023.04.039.
Gastroenterol Hepatol (N Y). 2022 Feb;18(2):75–84.
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